吸血鬼ものは、人外の中でも関係を描きやすい位置にある。
姿は人に近く、言葉が通じ、意思がある。サキュバスと並んで、人外ものの入口になりやすいジャンルだ。
そのうえで、このジャンルには他にない二つの特徴がある。血を吸う行為と、寿命の差だ。
血を吸う行為の意味
このジャンルの核が、まずここにある。行為そのものが、関係の象徴として機能する。
- 相手を選ぶ行為である — 誰の血でもいいわけではない、という設定が多い
- 一度きりではなく、繰り返される — 関係が継続する理由になる
- 相手の同意が必要な設定が多い — 対等性が保たれる
- 痕が残る — 関係が可視化される
この構造はオメガバースの番や淫紋とよく似ている。関係が身体に刻まれるという型だ。
| 設定 | 何が刻まれるか | 同意 |
|---|---|---|
| 吸血鬼の噛み痕 | 首の痕 | 必要な設定が多い |
| オメガバースの番 | うなじの噛み痕 | 作品による |
| 淫紋 | 紋様 | 一方的なこともある |
吸血鬼ものは、この三つの中で一番同意が前提になりやすい。そのぶん関係が対等に描かれ、恋愛として成立しやすい。
寿命の差
このジャンル固有の主題がこれだ。
片方は長く生き、もう片方はそうではない。必ず先に一方がいなくなるという前提が、関係に影を落とす。
| 結末の型 | どうなるか | 読後感 |
|---|---|---|
| 相手も同じ存在になる | 時間の差が消える。定番 | 明るい |
| 差を抱えたまま | 別れが前提になる | 切ない |
| 相手が人に戻る | 数は少ない | 明るい |
| 触れない | 設定として置くだけ | 軽い |
一つ目が一番多い。ただし人でなくなる選択を伴うので、そこをどう描くかで作品の重さが変わる。軽く扱う作品もあれば、重い決断として描く作品もある。
同じ問題はエルフ・亜人ものにもある。長命の種族を扱うジャンルに共通する主題だ。
主導するのはどちらか
古くから生きている側が主導する構図が定番だ。経験と力の差があるので、年の差ものと同じ力学になる。
- 吸血鬼が主導 — 数の大半。余裕のある年上として描かれる
- 人間側が主導 — 少数。吸血鬼が弱い設定と組み合わされる
- 対等 — 関係が変化していく型
二つ目の「弱い吸血鬼」型は、コメディになりやすい。血が苦手、能力が低い、といった設定で、読後感が軽い。サキュバスの「落ちこぼれ型」と同じ発想だ。
ホラー寄りか恋愛寄りか
吸血鬼はもともと怪物として描かれてきた存在なので、ホラー寄りの作品も存在する。
ただしアダルト作品では恋愛寄りが多数派だ。判別は難しくない。
- 表紙が明るい・人物が中心 → 恋愛寄り
- 表紙が暗い・雰囲気が重い → ホラー寄り
これは触手ものと同じ判別方法で、1秒で済む。
よくある設定
- 主従関係 — 血を捧げる側と受け取る側。立場の差が前提
- 正体を隠している — 人として暮らしている。ばれる緊張感が生まれる
- 一族・組織 — 集団として存在する。社会構造が描かれる
- 狩る側と狩られる側 — 対立から始まる。魔王・勇者の構図に近い
二つ目は男の娘ものやTS・憑依ものと同じ構造で、隠し通す緊張感が話を動かす。
よくある質問
ホラー要素はありますか
作品による。恋愛として描かれる作品が多く、その場合はホラー要素は薄い。表紙の色使いで見当がつく。
BLにもありますか
ある。長い時間を生きる存在という設定は、関係の重さを描くのに向いているため、執着と組み合わされることが多い。
人狼ものとは違いますか
別の設定だが、隣接している。人狼は獣人寄りで、発情期という装置が使われることが多い。吸血鬼は寿命と血が主題になる。
同じ存在になる結末を望んでいます
紹介文に「永遠」「同じ時を」といった語があるものが該当しやすい。レビューでも言及されることが多い。
人間側が主人公の作品が多いですか
多い。ただし吸血鬼側の視点で描かれる作品も一定数ある。紹介文の一人称で判別できる。
人外ものが初めてでも読めますか
このジャンルかサキュバス、エルフが入りやすい。姿が人に近く、会話が成立するためだ。順番は初めて人外ものを読むならにまとめた。