TSと憑依は、どちらも「体と意識がずれる」設定を使うジャンルだ。近い場所にあるが、ずれ方が違う。
TS(性転換)もの
TSは Trans Sexual の略として使われている。ある日突然、性別が変わってしまう設定を指す。
読みどころは、変化後の視点だ。それまで当たり前だった感覚が通用しなくなり、周囲との関係も変わる。その戸惑いを描く部分が中心になる。
作品によって扱いはかなり違う。コメディとして軽く進むものもあれば、アイデンティティの問題として重く踏み込むものもある。
憑依もの
憑依は、別人の体に意識が入る設定。TSと違い、元の体は別に存在している。
読みどころは、なりすましの緊張感にある。周囲は体の持ち主だと思って接してくるので、それに合わせながら過ごすことになる。ばれるかもしれないという状態が続く。
二つの違い
| TS | 憑依 | |
|---|---|---|
| 変わるもの | 自分の体の性別 | 入る先の体 |
| 元の体 | 変化している | 別に存在する |
| 中心にある感情 | 戸惑い | 緊張 |
| 周囲の認識 | 別人になったと分かる | 本人だと思っている |
周囲が気づいているかどうかが一番大きい違いだ。TSは事実として受け止められることが多く、憑依は隠し通す必要がある。
二つの共通点
どちらも「自分ではない立場から世界を見る」ことが中心にある。
だから、もとの人物がどう扱われていたかが物語の材料になる。軽んじられていた人物の体に入って、その扱いの理不尽さを内側から知る、という構成は定番だ。この点でざまぁとも接続しやすい。
もうひとつ、自分の意思で選んだ状態ではないという共通点がある。この点はオメガバースとも似ていて、当人が選べない前提から話が始まる。
初めて読むときの注意
設定の説明量が作品によって大きく違う。理屈をしっかり組む作品と、説明せずに進む作品がある。細かい整合性が気になる人は、試し読みで序盤の説明の丁寧さを確認しておくといい。
戻れるかどうかが物語の焦点になる。元に戻ることを目指す話なのか、その状態で生きていく話なのかで、読み心地はまったく変わる。あらすじで方向が示されていることが多いので、そこは読んでおきたい。
- 戻ることを目指す型 — 目標がはっきりしていて、話が進む方向が分かりやすい
- その状態で生きる型 — 関係や生活の変化が主題になる。落ち着いた読み心地
入れ替わる相手との関係も確認する。憑依ものでは、体の持ち主がどうなっているかで話の重さが変わる。そこに触れていない作品は、軽い方向で進むことが多い。
よくある質問
TSと入れ替わりは同じですか
近いが、入れ替わりは二人が互いの体に移る設定を指すことが多い。TSは自分の体が変わる設定で、相手を必要としない。憑依は片方向で、相手の体に入る形になる。
特殊設定が多くて難しそうです
設定そのものは単純で、覚える用語もほとんどない。むしろ用語が多いのはオメガバースのほうで、TSと憑依は前提を一行で説明できる。
コメディとシリアス、どちらが多いですか
どちらもある。表紙とタイトルで方向が示されていることが多く、軽い絵柄ならコメディ寄り、静かな絵柄ならシリアス寄りという傾向がある。試し読みで序盤の空気を見れば確実だ。