試し読みは、その作品の一番いいところを見せてはくれない。
公開されているのはたいてい冒頭の十数ページで、そこはまだ人物と状況を説明している段階だ。関係が動くのはもっと後になる。だから「試し読みが地味だったから買わない」という判断は、半分くらい外していると思っていい。
では何を見るのか。話の出来ではなく、つくりの安定を見る。技術は冒頭にも出るし、冒頭で崩れているものが後半で持ち直すことはまずない。
1. 顔が崩れていないか
同じ人物の顔が、コマによって別人に見えることがある。冒頭の十数ページでそれが起きている作品は、後半でも起きる。むしろ後半のほうがひどい。締め切りに追われる区間は最後に来るからだ。
見比べ方にコツがある。正面の顔だけを見ても差は出にくい。横顔とアオリ(下からの角度)を探して、正面と同じ人物に見えるかを見る。角度がついたときに輪郭を保てるかどうかで、その描き手の地力がだいたい分かる。
もうひとつ、髪型が複雑な人物ほど崩れやすい。長髪やツインテールの人物がいる作品は、そこを見ると判断が早い。
2. セリフの量
冒頭が説明台詞で埋まっている作品は、本編もテンポが遅いことが多い。設定を絵で見せられる描き手は、冒頭でもそうしている。
逆に、セリフがほとんどないまま数ページ進む作品は、絵に自信があるということでもある。好みは分かれるが、少なくとも手は抜いていない。
判断に迷ったら、1ページあたりの吹き出しの数を数えてみる。5つ6つと詰まっているページが続くなら、その作品は読むのに時間がかかる。それが好きな人もいるので悪いことではないが、さらっと読みたい気分のときには向かない。
3. ページの密度
作品ページにはページ数が出ている。同じ価格帯なら、当然多いほうが得に見える。
ただし数字だけでは決まらない。見開きや大ゴマの多い作品はページを消費する速度が速く、体感の分量は少なくなる。試し読みの範囲で1ページあたりのコマ数を眺めておくと、その作品がどちらのタイプか見当がつく。
| 見えるもの | 読み心地 |
|---|---|
| 1ページ2〜3コマ、大ゴマ多め | 勢いがあり、速く読める。ページ数の割に短く感じる |
| 1ページ5〜6コマ、均等割り | 情報量が多い。ページ数より長く感じる |
| 縦に流れる構成 | スマホ向け。コマ数では測れない |
どれがいいという話ではない。自分がいまどっちを読みたいかに合っているかだけが問題になる。
順番も決めておくと早い
候補が多いときは、上から順に全部の試し読みを開くと消耗する。次の順で見ると、外れをすぐ落とせる。
- 表紙と1ページ目の顔を見る(ここで崩れていたら閉じる)
- 横顔かアオリを探して、同じ人物に見えるか確認する
- 吹き出しの詰まり方を見て、読む速度の見当をつける
- ここまで通ったら、あらすじと紹介文を読む
多くの人は逆をやっている。あらすじから読んで、期待が高まった状態で絵を見るので、判断が甘くなる。絵を先に見たほうが、冷静に落とせる。
試し読みで分からないこと
結末は分からない。これはどうしようもない。
途中で展開が変わる作品もあるし、冒頭が丁寧でも後半が駆け足になることもある。試し読みで確認できるのは「最低限のつくりが保たれているか」までだ。
もうひとつ分からないのが、途中から入ってくる要素だ。恋愛ものとして始まって後半で別の展開になる作品は珍しくない。冒頭だけでは判別できない。これは試し読みではなく、レビュー本文で潰すしかない。
よくある質問
試し読みが1ページしかない作品は避けたほうがいいですか
避ける理由にはならない。公開範囲は作品ごとに決まっていて、描き手が手を抜いた結果ではない。範囲が狭いときは、表紙とサンプル画像で顔の描き分けを見て、あとはレビュー件数で補うのが現実的だ。
試し読みで面白かったのに、買ったら失速しました
冒頭は作者が一番時間をかける区間なので、そこと後半に差が出ることはある。これを事前に見抜く方法はないが、レビュー件数が多い作品ほど「後半が失速する」という指摘は本文に出てくる。件数の見方は星の数より、レビュー件数を先に見るに書いた。
短い時間で候補を絞りたいときはどうすればいいですか
作品ページのジャンル表示とレビュー本文で先に落としてから試し読みを開くと、開く回数そのものが減る。手順はハズレを引かない選び方にまとめた。